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研究・安倍晋三 (3)北朝鮮拉致 全員奪還まで圧力 強い自負、退路断つ

北國新聞朝刊 2006/9/24付

 「拉致問題に冷淡だったあなた方が、今になって家族に同情するふりをして私たちを非難する。絶対に許せない」。昨年六月、自民党本部を訪れたテレビ朝日の幹部に、幹事長代理だった安倍晋三が珍しく声を荒らげた。
 国会の参考人質疑で、拉致被害者横田めぐみの両親、滋と早紀江は、北朝鮮に対する経済制裁を要求。自民党参院議員の岡田直樹が二人の強い覚悟を伝えるため、あえて「(制裁すれば)不測の事態が生じないか」と質問したことに対し、キャスターの古舘伊知郎が「無神経な発言」と議員を批判したことが念頭にあった。

●秘書時から
 安倍が激高した背景には、日朝国交正常化を最優先する政府や自民党幹部に異を唱え、結果を出してきたという強い自負がある。
 拉致問題を知るのは国会議員になる前のことだ。一九八八年、欧州で行方不明になった元神戸外大生、有本恵子の両親が、父晋太郎の事務所を訪れた。当時、安倍は秘書として働いていた。著書によれば「半信半疑だったが、調べていくうちに北朝鮮の犯罪と信じざるを得なかった」という。
 九三年、安倍は衆院議員に初当選。九七年には超党派の議員とともに「北朝鮮拉致疑惑日本人救援議員連盟」(旧拉致議連)を結成した。しかし一貫して北朝鮮との国交正常化を目指す政府は、コメ支援には乗り出しても、拉致問題の真相究明には及び腰だった。
 二○○二年九月、首相小泉純一郎の訪朝に随行した官房副長官の安倍は、官房長官の福田康夫や外務官僚に対抗し、強硬姿勢で臨むよう進言。総書記、金正日から謝罪の言葉を引き出した。被害者五人の帰国時も、福田らの主張を抑えて五人を北朝鮮に戻さない方針を貫き、○四年には家族の引き渡しが実現した。
 「わが国が行うことができるすべての経済制裁措置を検討したい」。官房長官の安倍は今年七月五日、北朝鮮のミサイル発射を受け、貨客船「万景峰92」の入港を半年間禁止するなどの措置を発表。横田滋に電話し「ミサイルが解決しても、拉致問題が解決しなければ制裁は緩和しない。安心してください」と伝えた。

●高まる期待
 家族会は「全幅の信頼を置く安倍さんと連携し『被害者を全員返せ』という強力なメッセージを北朝鮮に送りたい」(副代表・飯塚繁雄)と安倍への期待感を表明する。拉致被害者を支援する「救う会」副会長の西岡力は「米国の制裁で北朝鮮が追い込まれている好機に、一番いい人が首相になる。天の配剤だ」と歓迎。安倍の自民党総裁選圧勝を「横田夫妻に対する世論の支持を反映している部分もある」とみる。
 安倍が首相の座をつかんだ”原点”は拉致問題とも言える。だが、期待が高まれば高まるほど、結果を出せなかったときの国民の失望感は大きくなる。総裁選で安倍は「拉致問題に落としどころはない。全員の奪還を目指す」と退路を断った。地元・山口県の親しい県議は言う。「安倍はこうだと思ったら直線的。ある意味単純だが、主張を通す」
 安倍と拉致問題に取り組んできた野党議員は「人の交流を断つなど全面制裁を実施するのか。テロが起きる可能性もあり、安倍の覚悟が問われる」と語る。(敬称略)

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